それがみえたのだからしかたがない。
それは無意識にみえるのだから。
ああ、どうしてこんなものをみせるのですか。
ああ、どうしてこんなに、綺麗な、美しい物を。
消したくない。
無くしたくない。
何故このようなものを。
これを守りたい。
自分の命と取り替えても。
これを守りたい。
しかしそれには、多くの犠牲が。
一つの物には多くの犠牲を払う事になる。
だが、許してくれ。
私はこれを、世界の遺産を。
私はこれを―――。
-Opening-
「おーきーーーろぉぉぉぉぉ!!!」
AM8:00。
耳の傍でいつも通りかなり大きな声に目が覚めた。
ベッドで気持ちよさそうにうつ伏せで寝ていたのは薄い青色の短い髪を無造作に投げ出している少女。
そして、彼女と全く同じ顔の、右目が蒼、左目が緑、薄い青色の長い髪の少女。
「・・・あ、ぅ・・・?」
寝惚け眼で薄ら目を開けた。彼女は両目とも蒼だ。
彼女はゆっくりと身体を起こした。
そして、
「スー・・・・・・」
身体を起こしたときの2倍の速さで枕のある方向へと倒れていった。
「寝るなって、くぉらぁ!!!」
「いたいいたい!起きる、起きるから!止めて!ファーお姉ちゃん!!」
「いくらいっても起きないニアが悪い!さっさと起きろ、この馬鹿妹!」
ファーことファーナリアは、全く同じ顔の双子の妹・ニアことニアセトラの耳を引張って怒鳴りつけた。
「ほら、さっさと着替えてご飯食べる!あんたのこと待ってたらあたしだって何時までも食べれないんだから!」
ファーはそう言うと、さっさと彼女等の部屋を出、居間へと向かって行った。
「・・・だって、眠いんだも・・・ん・・・」
「・・・おはよー・・・」
相変わらずの寝惚け眼で、ニアは出てきた。
ちゃんと、普段着に着替えている。
「・・・全く、あたしが起こしに行ってから何分経ってると思ってるの?!」
ファーはいらいらしていた。
「明日は母さんと父さんの命日なのよ?ちゃんと覚えてる?」
「もー・・・いくらあたしでもそれ位は覚えてるよぉ・・・ふぁ・・・ぁ」
大きく溜息をついたファーと、大きな欠伸をしたニア。
その双子は、顔は似ていても性格は全く似ていなかった。
「だいたいさ、あのときの事、忘れるなんて最悪じゃん。わたしたちにとっては。」
「・・・当り前でしょ。忘れんぼのあんたでさえ覚えてる。」
ファーは薄ら目を細めて言った。
「・・・酷いなあ、それ・・・」
ニアは苦笑して言った。
「本当なんだから、しょうがない。」
お皿に乗っていた目玉焼きを箸で挟んで、食べた。
「・・・まぁ、そーなんだけどさぁ・・・でも・・・酷いよねぇ・・・」
食べながら、ニアはぼやいた。
その食卓テーブルには、双子だけしかいなかった。
去年の丁度明日の話。
双子の両親が、車で『事故』死した。
そう、聞かされている。
聞かされているのであり、双子、特にファーは信じていない。
両親は二人とも運転免許証を持っており、事故を起こすような人たちではなかった。
親戚は通夜などの時に双子を「可哀相だ」と称したが、引き取るような人は、いなかった。
その上、「まぁしょうがない、起こってしまったことは。いつかこうなるとは思っていたけど」
等とまで言う人もいた。
双子の両親は、双子にしかわからない優しさがあった。
他の人たちには、伝わってなどいなかった。
双子は、泣く事は無かった。
信じれないといった気持ちが強かったのだろう。
両親が死んだということに対しても、親戚の気持ちにも。
それよりも、まさか双子が共に出かけた直後に電話が掛かって来ていたとは思わなかった。
双子は両親の死を知らせる電話に、気付けなかった。
ファーは頼まれていた夕飯の材料を買いに出かけようとし、そこへ、一人が嫌だからとニアが。
双子が家を出て行ったほんの数分後。
電話が鳴り響いた。
十数回鳴り響いた後、留守電に切り替わり、声が録音された。
帰ってきた双子は、それを聞き、慌てて家を飛び出した。
それ以来、彼女らは二人きりだった。
それでも今まで、寂しくても泣いた事はない。
泣いてはいけないという気持ちがあった。
片方が泣けば、それにつられ、もう片方も泣いてしまうから。
だから、二人とも泣く事は決してしなかった。
「ちょっと、ニア?ご飯の最中でしょ?ぼーっとしてないでさっさと食べな!」
「えっ?へ、あ・・・うん」
ちょっとどころかかなり間抜な声を出し、そのまま手を動かし始めた。
「・・・・・アンタ、また思い出してんの?」
「うん。お姉ちゃんは思い出さないの?」
ニアは手を動かしたまま言った。
その表情は、固く、無表情だった。
「・・・そんなの、思い出したってしょうがないでしょ。私たちは未来に進んでるのに」
ファーがはっきりとそう言うと、ニアは無言で返した。