顔合わせ。
ピリリリリ・・・・。
ばごんっ!!
朝の6時。
目覚ましが暫らく鳴ったかと思うと、急に何かにぶつかった音。
不審に思い覗いてみれば、オレンジ色のバンダナはちょこ、と綺麗に畳まれている。
「・・・・・・・すー・・・」
寝ている彼は何事も無かったように規則正しく寝息を立てている。
足は投げ出され、目覚し時計はネジが取れ、電池が散ばっている。
目覚まし時計は何とも無残な光景だ。
父親・・・エルトリオは、自分にそっくりの息子を苦笑して見ている。
どうにも目覚めだけは悪いようだ。
エルトリオの右手にはフライパン。
ジュ、ジューと音を立てて湯気を立てる。
母親は、いない。
一度キッチンへと戻ると、息子を起こしにかかる。
「エイト、そろそろ起きろ」
身体を軽く揺すれば、息子・・・エイトはもぞもぞと動く。
うー、と唸り声を上げたあと、エルトリオに気が付き、身体を起こした。
「・・・・・・何?」
「何、じゃないだろ。今日は何だ?」
「・・・・・・・あー・・・入学式」
「そう。判ったら早く準備を・・・」
「父さん、また目玉焼き焦がしたでしょ」
焦げ臭い匂いが、辺りに立ち込めている。
「・・・・・・火、止めた?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
結局朝食はエイトが作り、エルトリオは部屋の掃除。
最近はそれが当り前になっている。
なのに、エイトは朝が少々苦手。
眠いものだからたまに朝食は焦げた料理になっている。
エルトリオは朝が早い。
料理も上手い。
が、いつもエイトを起こす為、目を離して焦げた料理に。
よって、朝はエイト、夜はエルトリオに分担されている。
「えっと・・・父さん、制服は?」
確かそこに掛けといたんだけど、とぼやいた。
「ああ・・・あれな・・・」
「・・・・・・・・・・・ちょっと?」
エルトリオの目が泳いでいる。
「父さん!?」
バンッ、とテーブルを叩くと、食器類が軽く踊った。
「あれは・・・女生徒用だったようで・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぃ?」
聞き間違いではないだろうか。
確か、試着した時は学ランを着た。
なのに何故女用・・・・・?
何故今更気付いたのだろう・・・?
「って、ちょっと待って!じゃあ僕は何を着てけばいいの!!」
エイトの頭は混乱した。
「さっき連絡したら私服で良いそうで」
「僕だけ目立つじゃない!」
「それと、男用のは今日学校で手渡しということで」
「・・・・・・・朝の内に?」
「いや、放課後だそうで」
エイトは押し黙った。
エルトリオも黙った。
結局エルトリオの云う通り、私服で行く事にした。
家を出る直前に、「悪い奴に絡まれるな」やら「何かあったら連絡しろ」
等と過保護すぎるほどの言葉を言われてうんざりしつつも出てきた。
その間際、「入学式に来ても良いけど騒ぐな」と冗談交じりに云って来た。
途中、ぼーっと歩いていたら銀髪で長髪の私服の男性(自転車)に正面衝突しそうになった。
幸い、両者とも慌てて避けたので何とも無かったが。
大丈夫か、と聞かれ、その内にどんどん話は展開した。
よくよく聞けば、これから通うことになる学校の一つ上の先輩だった。
名前は聞いていない。
「そう言えば、入学式だろ?制服は・・・」
「あー・・・・・・聞かないで」
エイトは頭を抱えてみせた。
それなりの事情があるのだろうと感じ取った彼は、それ以上は聞かなかった。
が、気になるものは気になる。
「もしよければ校内で会ったときにでも教えろよ」
そう言うと、すぐに去ってしまった。
少々、時間を食ったかもしれない。
敷地内に入ったはいいが、厭に視線が痛い。
入学式に私服で来るなど、恐らく過去一人もいないだろう。
と、見知った顔を見つけた。
「エイト!」
「・・・・・・・・・・・・ミーティア?ミーティアなの?」
黒く綺麗な長髪の少女。
「久し振りね、いつから?」
「んー・・・小学校卒業した辺りかな。中学校は違ったし。」
「そうですね。ミーティアはとても楽しかったわ。」
「僕も、凄く楽しかったよ。・・・良かった、辛かったりしなくて。」
ここにきてやっと再会した。
二人は、同じ学校に通っていたころの事を懐かしげに話していた。
「ミーティア?」
ふと、ミーティアの後ろからの声。
「あ、ゼシカ。彼はミーティアの幼馴染のエイトです。エイト、こちらは中学校の時に同じクラスだったゼシカです。」
「よろしくね、エイト」
見た目からして活発そうな女子だった。
「うん、よろしく」
笑って答えた。
「・・・ねぇ、何で制服じゃないの?」
不思議そうな表情で、ゼシカは聞いた。
「えっ?あ、えっと・・・」
エイトは思わず口篭もる。
言いたくは無いものか、とゼシカは感じると「ううん、やっぱりいいわ」と笑う。
ほっ、と溜息をついた。
入学式は、滞りなく終了した。
新入生代表として、ミーティアが壇上に上がり挨拶をしていた。
周りの生徒たちは、既にエイトの服装を気にしてなどいなかった。
HR(ホームルーム)が終わり、放課後になるとエイトは担任の教師・マルチェロに声を掛けられた。
「エイト君、だったね。悪いのだが職員室まで来てもらえるか?」
やんわりとしたその口調に、エイトは心底安心した。
快く了承すると、マルチェロの後についていった。
「これが君の制服だ」
そう言われて差し出されたのは、真黒の服。
今度こそ、この手に受け取ったのは学ランだ。
「あ・・・あの、間違えてもらった制服はどうしたら・・・」
マルチェロは一言だけぼそ、と言った。
「え・・・あの・・・・・・?」
そう言ったのだが、途中で他の教師が入り、マルチェロはどこかへ行ってしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一人残されたエイトは、とりあえず職員室から出て行った。
暫らく後、家に帰ってから聞いてみると、その制服は暫らく預かっていてくれという電話が入ったと言われた。
Next
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始まりました。連載。パラレルです。
エルトリオ様が居ります。
銀髪の長髪男子。誰かおわかりでしょうか?(笑