気が付くと、そこは真っ暗だった。
誰も居なく。自分ひとり。
誰か・・・、誰か気付いて・・・!
Where're you・・・?
「千石?」
橘が部屋へと再び足を踏み入れたのは、既に夜9時を過ぎた頃。
千石は、まだ時間も早いと言うのに、寝ていた。
「・・・千石・・・」
橘は、ふっと微笑んだ。
よく見ると、千石の手は伊武の手をしっかり握っている。
そして、その頬には泣いた後がしっかり残っていた。
「・・・ありがとう」
橘は、寝ている千石に向かって、言った。
「んッ・・・。今何時・・・?」
千石は手探りで、何かを探した。
「あれ??」
その先には何も見つからず、ただ、布団の上を手が行き来しているだけだった。
千石は、しばし固まっていた。
目の前にいる愛しい恋人を、何をするでもなく見つめた。
「・・・深司クン・・・・・・・」
深司はベッドの上に横たわっているが、寝息は聞こえない。
トントン
病室のドアを誰かが叩いた音がした。
「はい?」
「よぉ、おはよう。」
「橘クン・・・。うん、オハヨ。」
千石は力の無い笑顔で、橘を見た。
「千石・・・昨日何も食ってないだろ。妹がお前に弁当作ってくれたぞ。」
「え・・・・・・。」
千石は驚き、橘が持っていた布に包まれた物を見る。
「昨日帰ってから、お前のことを杏に話したら、『明日お弁当作る!』って聞かなくてな。」
「・・・・・・ありがとう」
千石はもう一度、にっと笑った。
「ねぇ、橘クン。今日って、土曜だよね?」
「ん?そうだが・・・。それがどうかしたのか?」
「いやぁ・・・今日も泊まれるなぁって思ってさ。」
にへらっと力無く笑う千石を見て、橘が表情を思わず緩ませた。
何気なく言ったその言葉の中に、深司に対する想いがたくさん含まれていたから。
「おぃ、千石。少しは何か食え。そうじゃないとお前が・・・」
「ん、ダイジョーブだよ。それぐらいなんてことないから。」
そうは言ったものの、千石の顔は少し青くなっている。
橘は心配したが、千石は深司の方の心配で、いっぱいいっぱいだった。
太陽の位置が真南に来た頃。
それでも、千石は深司の病室から一歩も出ない。
当たり前だが、携帯の電源は切られており、誰から連絡がきてもわかりはしない。
そっと、千石は伊武の手を握る。
「・・・千石?」
それまで殆ど、水分も取ろうとしなかった千石が動いた事で、傍にいた橘が、驚いた。
千石は、伊武の手を軽く握ったまま、動こうとしない。
伊武の手が、握られた手を軽くではあるが、握り返した。
「・・・・・深司クン・・・」
千石に、自然と笑みが零れた。
―――お願いっ、早く助けて・・・
「・・・・・えっ・・・・・・?」
深司の声が聞こえた気がした。
「・・・どうした、千石?」
「あ・・・。ううん、なんでもない。」
気のせいか。そう思った。
何だったんだろう。
きょろきょろ辺りを見回す事も出来ない。
きっと橘が不審に思うから。
・・・なぜ助けて欲しいのか。
・・・何を助けて欲しいのか。
どうして自分にだけ聞こえたのか。
もしも深司が言ったのなら、深司が起きた時に聞いてみようと思う。
「深司クン・・・俺はここにいるよ?」
「・・千石?」
「早く、起きてよ・・」
「・・・・・・」
千石は、目からポロポロと涙を流している。
太陽がゆっくりと沈み始めた頃。
病室には、深司と千石しかいなかった。
つい先程病院を出て行った。
「ねぇ・・・聞こえる?さっき、『助けて』って言ったの、深司クン?何がどうしたの?」
千石は、橘が病室を出て行ってからずっと、深司に話し掛けていた。
俯いてそうやっていたせいか、千石は伊武が薄っすらと目を開け始めた事には気づかなかった。
「・・・・・・あ・・・・・・・」
深司が完全に瞼を開いた。
そして、ゆっくりと視線を千石に移す。
「え・・・・・・しん、じクン・・・?」
千石はバッと顔を上げ、深司を見る。
「・・・・・・・・・・」
深司は何かを躊躇っている。
「・・・・・あなた・・・誰、ですか・・・?」
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なんだかね・・・、私には千石さんが救えなくなってきたよ・・・(酷)
そういえば、この話の1話目・・・だいぶ前に書いた気がする・・・;
あぁ、だからか・・・。1話目のブンショーがおかしくなってるの・・・