ハローハロー。
聞こえてますか。


ハローハロー。

自分の声だけが、木霊する。


何もかもがわからなくて

自分のことすら何もわからなくて。

自分がどうしたのか、どうしてこうなったのか。




全てが何も、わからなくなってしまった。




Where're you・・・?



「・・・・深司ぃ・・・何で・・・・だよぉ・・」
神尾は深司の部屋を出た直後から、嗚咽を上げ始めた。
誰にも聞こえてはならない、そんな声。
自分だけしかいないから、自分にしか聞こえずに。

ただただ独りで泣いていた。








「ねぇ、橘クン。俺たちが深司クンに出来る事って、何だと思う?」

友達でいる事?・・・いつも通り過ぎる。
神尾にとっては。

支えてあげられる先輩になる事?・・・・それもいつも通り過ぎる。
橘にとっては。


ならば、千石は?






千石は、深司にとって大切な人であったし、深司は千石にとって大切な人。
なのに、そのままで良いのだろうが、千石の想いは記憶を失くした深司に届くのか。


「・・・・・・いつも通りでいることしか出来ないのかな。」
「・・・・・・そうかも知れんな。」
千石は、今は寝ている深司を見る。

切なく、苦く。
このまま、戻らないのか。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
いやだ、そんなのは。


勝手に思い、勝手に首を振る。








次の日。

この日はいつも通り、学校があったから、病室には深司一人だけ。
千石も、橘も、神尾もいない。
つまらないようで、つまらなくはない。
上半身を起こし、窓から病院の入り口付近を見つめる。


そのまま、時間は止まる事無く過ぎていく。


暫らくそうしたままでいたら、見覚えのあるオレンジ色の髪の毛―千石が誰かと一緒に来た。
確か、千石は3時頃まで来れないと言っていたはずだ。
ふと後の壁に掛かっている時計を見ると、もう既に3時半を回っていた。
どれほどボーっと過ごしていたのかと考えると、自然と苦笑が零れる。


トントン。

「・・・千石さん?」
カチャ、と音を立てて入って来た。
思った通り、先ほど見えたオレンジ色の髪の毛の人は千石だった。
だが、もう一人は知らない。
「やっほ、深司クン!よくわかったねぇ。」
「まぁ・・・ここから見えましたから。」
千石はふぅん、と相槌をうった。
「やぁ、伊武くん。」
千石と一緒に来たもう一人。
名前を知らず、ぺコ、とお辞儀だけをした。
「深司クン、彼はね、南って言うんだよ。」
「・・・みなみ・・・さん?」
「あぁ、宜しく。」
深司は一度だけ不思議そうな顔をしたが、すぐに戻し、それに答えた。


『よろしくおねがいします。』


その言葉を聞いた瞬間、南は千石が学校で言っていた言葉の意味を、理解した。


『南。大切な人が、自分の事を忘れちゃったら南ならどう思う?』
『あぁ・・・伊武くんのことか?』


その時は、なんと答えてやれば良いのかわからなかった。
だが、今ならわかった気がする。

そう思い、何気なく千石の方をみた。
南の視線に気付いたのか、千石は視線を合わせてきた。
そして、悲しそうに、嬉しそうに、微笑んだ。




千石が少し用事がある、と言って病室を出て行った後。
南と深司の二人だけ。
「なぁ、伊武くん。」
「ハイ・・?」
「本当に、千石のことは・・」
南はそこで口を閉ざした。
最後まで言わなくても、こんなことを聞かなくとも答えはわかっているはずなのに。

「・・・・・・すいません・・・。」
「謝るとこじゃないよ。」
苦笑して、言う。
「事故に遭ったのは、キミの所為じゃないから。
それにさ、小さな、自分より弱い生き物を助けるのはとてもいい事だって、俺は思うけどな。」
深司は、南のその言葉に驚く。
「・・・・・・助け、た・・・?」
「あれ、何も聞いてないの?」
深司が小さくそう呟いたときに、南は少しだけ焦ってしまった。
「・・・弱い、生き物・・・ですか?」
「あぁ。えっと・・茶色の猫だったかな。」
「・・・・・・猫・・・・・・」
猫、と言う言葉を口に出すと、深司は少しだけ微笑んだ。













ハローハロー。
聞こえますか。


ハローハロー。
聞こえてます。


何だか懐かしくなってきて

胸の奥が少しだけ、暖かくなって。






少しだけ、何をしていたのかがわかったような気がします。



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南君が助っ人で登場。・・うぬ〜・・・(何)
ごめんなさい・・・。もう・・・何が何だか・・・。
きっと、私の中の何かが壊れてるんです(苦笑)。
まだまだ続く気がしますが・・・まだこの話に着いて来てくれますか?(誤)